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椎間板ヘルニア

椎間板ヘルニアとは、背骨の骨と骨の間にある椎間板(クッションのような役割を果たす)が壊れ、中にあるゼリー状の髄核(ずいかく)が外に飛び出し、周囲の神経を圧迫することで痛みやしびれを引き起こす状態を指します。この病気は特に腰椎(腰の部分)に多く発生し、足やお尻の痛み、しびれが特徴的です。また、首の部分に起こる頸椎椎間板ヘルニアもあります。

椎間板ヘルニアの原因

  1. 加齢による椎間板の劣化: 椎間板は年齢とともに水分を失い、弾力性が低下します。これにより、椎間板が壊れやすくなり、髄核が外に飛び出しやすくなります。
  2. 姿勢や重い荷物の持ち上げ: 重いものを無理に持ち上げたり、腰に負担がかかる姿勢を続けることで椎間板に圧力がかかり、損傷するリスクが高まります。
  3. 外傷: 事故や転倒による外傷で、椎間板が急激に壊れることがあります。

椎間板ヘルニアの症状

椎間板ヘルニアの主な症状は、飛び出した髄核が神経を圧迫することで発生します。症状の範囲や強さは、ヘルニアが発生した部位や圧迫される神経の場所によって異なります。

  • 腰椎椎間板ヘルニアの症状:

    • 坐骨神経痛: 腰からお尻、太もも、ふくらはぎ、足先まで続く痛みやしびれ。
    • 腰痛: 腰部の強い痛みや不快感。
    • 筋力低下: 足の筋肉が弱くなり、歩行に支障が出ることがあります。
  • 頸椎椎間板ヘルニアの症状:

    • 腕や手のしびれ: 首から腕、手にかけて痛みやしびれが生じる。
    • 首の痛み: 頸部の強い痛みがあり、動かすと悪化することがあります。

椎間板ヘルニアのエビデンスに基づく理解

2010年のメタアナリシスによると、軽度から中等度の腰椎椎間板ヘルニアは、保存的療法(手術以外の治療)で自然に回復するケースが多く、手術が必要になるのは全体の約10〜15%に過ぎないとされています。さらに、非手術的治療法は長期的な効果を持ち、多くの患者が数ヶ月以内に症状の改善を感じることが確認されています。

椎間板ヘルニアの治療法

  1. 保存的療法(手術をしない治療)

    • 物理療法(理学療法): ストレッチや筋力トレーニングを通じて背骨周辺の筋肉を強化し、負担を減らします。温熱療法や電気治療も痛みの軽減に役立つことがあります。
    • 薬物療法: 痛みを和らげるために、消炎鎮痛薬や筋弛緩薬が処方されることがあります。これにより、痛みや炎症が軽減されます。
    • 生活習慣の改善: 姿勢の見直しや、無理のない範囲での適度な運動が推奨されます。腰に負担をかけないために、重いものを持ち上げる動作を避けることが重要です。
  2. 手術療法

    • 椎間板摘出術: 飛び出した髄核が神経を圧迫している場合、手術で取り除くことで症状を改善します。これは重度のヘルニアや、保存的治療で効果が見られない場合に行われます。

鍼灸施術による椎間板ヘルニアの治療

鍼灸は、椎間板ヘルニアの保存的療法の一つとして、痛みの緩和神経機能の回復をサポートする治療法として利用されています。

  1. 痛みの緩和:

    • 鍼灸では、神経の過剰な興奮を抑え、痛みを軽減する効果があります。鍼を神経や筋肉に挿入することで、血行が促進され、炎症が鎮まると考えられています。
    • 2013年の研究では、鍼治療が腰椎椎間板ヘルニアにおける痛みの緩和に効果的であることが示されています。この研究では、鍼治療を受けた患者の多くが、他の保存的治療と比べて痛みの軽減を感じたという結果が得られています。
  2. 筋肉の緊張をほぐす:

    • ヘルニアによって引き起こされる痛みは、筋肉の緊張も関連しています。鍼灸施術では、この緊張を緩和し、筋肉の柔軟性を回復させる効果が期待できます。
  3. 身体のバランスを整える:

    • 鍼灸は東洋医学の一部であり、身体全体の気の流れを整え、自然治癒力を高めることを目的としています。背中や腰、神経が圧迫されている部位だけでなく、身体全体にアプローチすることで、根本的な改善を図ります。

セルフケアと日常生活での工夫

  • 姿勢を良くする: 長時間同じ姿勢を保つことは避け、正しい姿勢を心がけましょう。特に腰に負担がかからないよう、背筋を伸ばし、適度に休憩を取り入れることが重要です。
  • 適度な運動: ウォーキングや水中でのエクササイズは、腰に負担をかけずに筋力を維持できる良い方法です。
  • 体重管理: 体重が増えると腰にかかる負担も増えるため、体重を適正に保つことも予防や症状の改善に役立ちます。

まとめ

椎間板ヘルニアは、椎間板が破れて髄核が神経を圧迫し、痛みやしびれを引き起こす病気です。保存的療法として理学療法や薬物療法、生活習慣の改善が効果的であり、手術が必要な場合もあります。鍼灸施術は、痛みの緩和や筋肉の緊張をほぐす効果があり、椎間板ヘルニアの治療法の一つとして考慮されることがあります。適切なセルフケアと併せて、症状の改善を目指すことが大切です。